【中国】中国の最高人民法院は上海市高級人民法院への批復により、知的財産訴訟において権利の濫用をした原告に被告の合理的支出を賠償する問題の取扱いを明確にしました。

2021年06月

 最高人民法院審判委員会第1840回会議で「知的財産権侵害訴訟における被告が原告の権利の濫用を理由とした合理的支出の賠償の請求の問題に関する批復*1」(法釈〔2021〕11号)(こちら)が可決され、2021年6月3日より施行されました。
 民法典、民事訴訟法及び専利法、商標法などの知的財産法において権利の行使は誠実信用の原則を遵守しなければならないことが規定されています。今回の批復は、最高人民法院が党中央の戦略の貫徹及びその実践であり、社会における関心を積極的に応え、当事者を誠実信用の原則に基づく権利行使へ導く*2のに重要な意義を有します。
 上記批復は、上海市高級人民法院による「知的財産権侵害訴訟における被告が原告の権利の濫用を理由とした合理的支出の賠償の請求の問題に関する伺い」に対するものですが、最高人民法院による司法解釈であり、法律と同様の法的効果を有しています。
 上記法釈〔2021〕11号において、最高人民法院は「知的財産侵害訴訟において、被告が証拠を提出して原告の訴えが法律に規定された権利を濫用して被告の合法的権益を損なったことを証明して、法に依り訴訟のために支払った合理的な弁護士費用、交通費、食費宿泊費などの支出について、原告に対して賠償を請求する場合、人民法院は法に依り支持する。被告は別途訴えを提起して原告に上述の合理的支出の賠償を請求することもできる」ことを明確にしました。


*1ここの「批復」、司法解釈の一態様である。
*2参考情報:http://www.court.gov.cn/zixun-xiangqing-307071.html