【欧州】欧州特許庁(EPO)拡大審判部審決(G2/21)が公表されました。
2023年04月
2023年3月23日付け拡大審判部審決(G2/21)において、出願日後に提出された証拠(post published evidence)の取扱いに関する、拡大審判部の見解が示されました。これは、進歩性の根拠となる技術的効果を裏付けるために、特許出願人または特許権者が出願後に提出した証拠を参酌すべきか否かについて、技術審判部から付託されていた質問に、拡大審判部が答えたものです。
I. 拡大審判部に付託された質問の概要
1.自由心証主義(例えば、G3/97理由5、G1/12理由31を参照)の例外として、効果の証明が出願後の証拠(データ)のみに依存しているという理由で、出願後の証拠(データ)を無視することが認められるか?
2.質問1の答えがイエス(効果の証明が出願後の証拠(データ)のみに依存する場合には出願後の証拠(データ)を無視できる)の場合:出願時の当業者が特許出願の情報に基づいて効果がもっともらしい(plausible)と判断できる場合には、出願後の証拠(データ)を参酌することができるか?
3.質問1の答えがイエス(効果の証明が出願後の証拠(データ)のみに依存する場合には出願後の証拠(データ)を無視できる)の場合:出願時の当業者が特許出願の情報に基づいて効果がもっともらしくない(implausible)と判断する理由が無い場合には、出願後の証拠(データ)を参酌することができるか?
II.拡大審判部の見解
G2/21審決の概要は以下の通りです。
1.クレームされた発明の進歩性を肯定するための根拠としての技術的効果を証明するために特許出願人または特許権者が提出した証拠は、特許出願日前に公開されておらず、出願後に提出されたという理由だけでは、無視することはできない。
2.技術常識を有する当業者が当初の出願に基づいて、技術的教示に包含され、かつ当初に開示された同一の発明により具体化されるものとして、当該効果を導き出せる場合、特許出願人または特許権者は、進歩性のための技術的効果に依拠できる。
G2/21の詳細につきましては、以下URLをご参照ください。
(プレスリリース)
https://www.epo.org/law-practice/case-law-appeals/communications/2023/20230323.html
(審決本文)
https://documents.epo.org/projects/babylon/eponet.nsf/0/C620B61029205275C125897B002BEDCF/$File/G2_21_Decision_%20of_the_Enlarged_Board_of_Appeal_of_23_March_2023_EN.pdf