【米国】USPTO、AI支援発明の発明者に関するガイダンスを公表
2024年03月
米国特許商標庁(USPTO)は2024年2月13日付の官報にて、人工知能(AI)の支援を受けた発明(AI支援発明)の発明者要件(inventorship)に関するガイダンスを公表しました。
ガイダンスにおいて、USPTOは、米国特許法上の「発明者」は自然人でなければならないとの認識を再確認したうえで、AI支援発明はカテゴリー的に特許性がないとは言えないとしています。
具体的には、自然人がAIを利用して発明を完成させた場合でも、クレームされた発明に重要な貢献をした時は、その自然人が発明者としての適格性を有し、特許出願等には、発明に重要な貢献をした自然人を発明者として記載しなければならないとしています。
ここで、発明に重要な貢献した自然人に該当するか否かは、Pannu v. Iolab Corp.事件で明示された、以下の3つ要件(Pannu要件)を満たす必要があります(セクションIV-A)。
(1)発明の着想または実施化に何らかの重要な貢献をしたこと、
(2)クレームに記載の発明に対して、発明全体に照らして評価した場合に、質的に無意味でない程度以上の貢献をしたこと、
(3)単に真の発明者によく知られた概念や現在の技術水準を説明しただけでないこと。
また、ガイダンスでは、AI支援発明における自然人の貢献が重要であるか否かの判断は困難であり、明確なテストは存在しないとしています。そこで、出願人やUSPTOの審査官が判断する際に役立つ原則を、非網羅的なリストとして以下の5つを示しています(セクションIV-B)。
1. | 自然人がAI支援発明の創作に際しAIシステムを使用したとしても、発明者としての貢献は否定されない。自然人がAI支援発明に重要な貢献をした場合は、発明者としてその自然人を記載することができる。 |
2. | 問題の認識や問題解決に対する一般的な目標や研究計画を有するだけでは、着想のレベルに達していると言えない。AIシステムに問題を提示しただけの自然人は、AIシステムの出力から特定される発明の発明者として適切でない可能性がある。しかし、その自然人が特定の問題を念頭に、AIシステムから解決策を引き出すようにプロンプト(指示文)を構成する方法によって重要な貢献が示される可能性がある。 |
3. | 発明を実施化するだけでは、発明者に値する重要な貢献にはならない。したがって、AIシステムの出力を発明として認識し評価しただけの自然人は、特に、その出力の特性や有用性が当業者にとって明らかである場合には、発明者とは言えない可能性がある。しかし、AIシステムの出力に重要な貢献を付加して発明を創出した自然人は、適切な発明者となり得る。あるいは、AIシステムの出力を利用して実験を成功させた自然人は、発明が実施されるまでその者の着想を立証できなくとも、特定の状況下においては、その発明に重要な貢献をしたことを証明できる可能性がある。 |
4. | クレームされた発明をもたらした重要な構成要素を開発した自然人は、クレームされた発明の着想につながった各活動に参加等しなかった場合でも、クレームされた発明の着想に重要な貢献をしたとみなされる可能性がある。自然人が特定の問題を念頭に、特定の解決策を引き出すように、AIシステムを設計、構築、訓練した場合、AIシステムの設計、構築、訓練は、AIシステムを利用して創出された発明に対する重要な貢献であり、その自然人が発明者となり得る |
5. | AIシステムに対する「知的支配力」を維持していても、それ自体で、そのAIシステムを利用して創出された発明の発明者となるわけではない。したがって、発明の着想に重要な貢献をすることなく、単に発明の創出に使用されたAIシステムを所有または監督しているだけの者は発明者とはならない。 |
ガイダンスの詳細につきましてはUSPTOの以下URLをご参照ください。
2024年2月12日付けのプレスリリース
https://content.govdelivery.com/accounts/USPTO/bulletins/389b069
2024年2月13日付の官報
https://www.federalregister.gov/documents/2024/02/13/2024-02623/inventorship-guidance-for-ai-assisted-inventions