【米国】USPTO、PTABの暫定的手続に関する覚書を発行
2025年04月NEW
2025年2月28日、USPTO(米国特許商標庁)は、2022年6月21日付の覚書「地方裁判所での訴訟と並行して行われる米国発明法(AIA)付与後手続における裁量的拒否に関する暫定手続(Interim Procedure for Discretionary Denials in AIA Post-Grant Proceedings with Parallel District Court Litigation)」を撤回すると公表しました。
詳細につきましては、弊所知財トピックス2025年3月掲載分をご参照ください。
https://www.saegusa-pat.co.jp/topics/16993/
2025年3月24日および26日、USPTOは、上記の撤回に伴う覚書を発行しました。これら2つの新しい覚書は、当事者系レビュー(IPR)および付与後レビュー(PGR)の両方における、特許審判部(PTAB)の審理開始の裁量拒否について暫定的な指針を示すものです。
1. 2025年3月24日付の覚書
PTABの行政特許担当首席判示であるScott Boalick氏は、USPTOの過去の政策への回帰を踏まえて今後進むべき方向性として、5つの指針を示す覚書を公表しました。
覚書の全文は以下URLから入手できます。
https://www.uspto.gov/sites/default/files/documents/guidance_memo_on_interim_procedure_recission_20250324.pdf
主な内容は以下の通りです。
① 特別な事情がない限り、PTABは、2022年の暫定手続に基づいて下された過去の決定を再検討しない。
② 先例(Apple Inc. v. Fintiv, Inc. IPR事件)の審決で示された要因(Fintiv要因)は、地方裁判所で並行して訴訟が行われている場合だけでなく、国際貿易委員会(ITC)で並行して訴訟が行われている場合にも適用される。
③ 先例(Sotera Wireless, Inc. v. Mashimo Corp. IPR事件)の審決で規定されたように、申立人がIPRもしくはPGRで提起された、または提起可能であった理由を地方裁判所(またはITC)で追及しないことに同意した場合、審理開始を支持する「極めて関連性の高い」要因とみなされるが、それ自体で審理開始が決定されるわけではない。
④ PTABは、審理開始を拒否するか否かを検討する際に、地方裁判所の公判日またはITCの最終決定目標期日が近いか否かを考慮することができる。
⑤ Fintiv要因を考慮し、審理を開始するか否かを判断する際、説得力のあるメリットの提示だけでは決定的な要因とはならない。
2. 2025年3月26日付の覚書
USPTOの長官代行であるCoke Morgan Stewart氏は、少なくとも3名のPTAB判事からなる委員会と協議の上、審理開始の裁量的拒否の妥当性を決定するプロセスに関する覚書を公表しました。
覚書の全文は以下URLから入手できます。
https://www.uspto.gov/sites/default/files/documents/InterimProcesses-PTABWorkloadMgmt-20250326.pdf
このプロセスでは、審判部の他の業務負荷も考慮されます。長官(長官代理)は、少なくとも3名のPTAB判事と協議し、裁量的拒否が適切であるかどうかを判断し、適切でない場合、長官(長官代理)は、申立をPTAB判事の3名のメンバーからなるパネルに付託します。
また、申立人がIPRまたはPGRを請求した後、特許権者は裁量的拒否を求める意見書を提出することができ、申立人はそれに対して反対意見書を提出することができます。