交通安全スローガン事件 ライントピックス事件 ラストメッセージ in 最終号事件

【著作権:資料】 参考裁判例

■交通安全スローガン事件(東京地判平成13年5月30日)

この事件では、被告の作成した「ママの胸よりチャイルドシート」とのスローガンが、原告の作成した「ボク安心ママの膝よりチャイルドシート」とのスローガンに関する著作権を侵害するかが問題となりました。東京地裁は、以下のように述べ、原告スローガンの著作物性を肯定しつつも、類似性を否定し、原告の請求を棄却しました。

「『創作的に表現したもの』というためには、厳密な意味で、独創性の発揮されたものであることまでは求められないが、作成者の何らかの個性が表現されたものであることが必要である。・・Xスローガンは、3句構成からなる5・7・5調・・調を用いて、リズミカルに表現されていること、『ボク安心』という語が冒頭に配置され、幼児の視点から見て安心できるとの印象、雰囲気が表現されていること、『ボク』や『ママ』という語が、対句的に用いられ、家庭的なほのぼのとした車内の情景が効果的かつ的確に描かれているといえることなどの点に照らすならば、筆者の個性が十分に発揮されたものということができる」

■ライントピックス事件(東京地裁平成16年3月24日)

この事件では、読売オンライン(以下「YOL」という)におけるニュースの見出部分の著作物性が問題となりましたが、東京地裁は、以下のように述べ、ニュースの見出部分の著作物性を否定しました。この判断は、控訴審の知財高裁平成17年10月6日でも維持されていますが、知財高裁では、不法行為に基づく損害賠償請求が認容されています。

「『創作的に表現したもの』というためには、筆者の何らかの個性が発揮されていれば足りるのであって、厳密な意味で、独創性が発揮されたものであることまでは必要ない。他方、言語から構成される作品において、ごく短いものであったり、表現形式に制約があるため、他の表現が想定できない場合や、表現が平凡かつありふれたものである場合には、筆者の個性が現れていないものとして、創作的な表現であると解することはできない。 YOL見出しの「ホームレスが・・・銃撃で重傷」の部分は、「ホームレスが銃撃で重傷を負った」との事実を、ごく普通の表現方法で記述したものである。また、「アベックと口論?」の部分は、YOL記事中の「男性は男女2人組と言い争いになった末に撃たれたと見られる。」との部分を前提として、銃撃の原因が「口論」であるか否か断定することを避けるため「?」を付記したものであり、慣用的な用法であるといえる。上記YOL見出しは、ありふれた表現であるから、創作性を認めることはできない。」

[著作物性が否定されたニュース見出記事]

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マナー知らず大学教授、マナー本海賊版作り販売
ホームレスがアベックと口論?銃撃で重傷
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■ラストメッセージ in 最終号事件(東京地判平成7年12月18日)

この事件では、休刊または廃刊となった雑誌の最終号に掲載された挨拶文の著作物性が問題となりましたが、東京地裁は、著作者の個性が表現された挨拶文については著作物性を認め、ありふれた言い回しにとどまるものについては著作物性を否定する判断を下しました。

[肯定例] (判例時報1567号134頁、135頁)
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[否定例] 
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