脱ゴーマニズム宣言 事件 ときめきメモリアル事件

【著作権:資料】 参考裁判例

■脱ゴーマニズム宣言 事件(東京高裁平成12年4月25日)

この事件では、原告・小林よしのりの漫画「ゴーマニズム宣言」のカットが、被告らが著作・出版した書籍「脱ゴーマニズム宣言」で引用された際に、人物に目隠しを施す、コマの配置を変更するとの改変が加えられたことに関して、同一性保持権の成否が問題となりました。東京高裁は、目隠しについては、やむをえない改変にあたるとして同一性保持権侵害を否定する一方、コマの配置を変更については同一性保持権の侵害を肯定しました。

(1)目隠し「(カット中の)人物は、同人がこれを見れば不快に感じる程度に醜く描写されているものと認められるから、同人の人格的利益たる名誉感情を侵害するおそれが高いと考えられる。・・・著作物の適正な利用の確保を目的とする著作権法20条2項の趣旨に鑑みると、右のような場合に相当な方法で改変をすることは、著作権法20条2項4号にいう『やむを得ないと認められる改変』に当たると解するのが相当である。」
(2)コマの配置変更 「読み進む順序が変わらないからといって、同項にいう『改変』に当たらないというものではない。・・・カット37の第1、第2コマには、女性が殴られているのを軍人が煉瓦の蔭から見て驚いている場面と、軍人が業者に押印させているらしい場面の二つの異なった場面が左右に書かれているから、第1、第2コマは二つのコマというべきである。のみならず、同じコマを指さしているとしても、そのコマのどの部分を、どの方向から指さしているのかということ自体が控訴人書籍における表現なのであるから、同じコマを指さしているから改変ではない、ということもできない。・・・カット37における原カット(ハ)の配置を変更したのは、Y書籍のレイアウトの都合を不当に重視して原カット(ハ)におけるXの表現を不当に軽視したものというほかはなく、・・・右改変を、著作権法20条2項4号の『やむを得ない改変』にあたるということはできない。

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■ときめきメモリアル事件(最判平成13年2月13日)

この事件では、恋愛シュミレーションゲーム「ときめきメモリアル」(プレイヤーが架空の高等学校の生徒となって、設定された登場人物の中からあこがれの女生徒を選択し、卒業式の当日、女生徒から愛の告白を受けることを目指して、3年間の勉学、行動等を通じて愛の告白を受けるためにふさわしい能力を備えるための努力を積み重ねることを内容とします)において使用される、ハッピーエンドを簡単に実現するためのパラメータのデータを記録したメモリーカードを販売する行為が不法行為にあたるかが問題となりました。最高裁は、メモリーカードの使用は、原告のゲームソフトの改変にあたり、同一性保持権を侵害するとした上で、これを販売する被告への損害賠償請求を認容しました。

「本件メモリーカードの使用は,本件ゲームソフトを改変し,被上告人の有する同一性保持権を侵害するものと解するのが相当である。けだし、本件ゲームソフトにおけるパラメータは,それによって主人公の人物像を表現するものであり,その変化に応じてストーリーが展開されるものであるところ,本件メモリーカードの使用によって,本件ゲームソフトにおいて設定されたパラメータによって表現される主人公の人物像が改変されるとともに,その結果,本件ゲームソフトのストーリーが本来予定された範囲を超えて展開され,ストーリーの改変をもたらすことになるからである。・・・専ら本件ゲームソフトの改変のみを目的とする本件メモリーカードを輸入,販売し,他人の使用を意図して流通に置いた上告人は,他人の使用による本件ゲームソフトの同一性保持権の侵害を惹起したものとして,被上告人に対し,不法行為に基づく損害賠償責任を負うと解するのが相当である。」