ヒットワン事件 選撮見録(よりどりみどり)事件

【著作権:資料】 参考裁判例

■ヒットワン事件(大阪地裁平成15年2月13日)

この事件では、通信カラオケ装置のリースを行う被告が、JASRACの許諾を受けていない社交飲食店93店舗に対してカラオケ装置をリースし、楽曲を提供する行為に対する差止請求の可否が問題となりました。大阪地裁は、以下のように述べて、カラオケリース業者が著作権法112条1項の「著作権を侵害する者又は侵害するおそれがある者」にあたるとの判断を下しました。

「著作権法112条1項にいう「著作権を侵害する者又は侵害するおそれがある者」は、一般には、侵害行為の主体たる者を指すと解される。しかし、侵害行為の主体たる者でなく、侵害の幇助行為を現に行う者であっても、〔1〕幇助者による幇助行為の内容・性質、〔2〕現に行われている著作権侵害行為に対する幇助者の管理・支配の程度、〔3〕幇助者の利益と著作権侵害行為との結び付き等を総合して観察したときに、幇助者の行為が当該著作権侵害行為に密接な関わりを有し、当該幇助者が幇助行為を中止する条理上の義務があり、かつ当該幇助行為を中止して著作権侵害の事態を除去できるような場合には、当該幇助行為を行う者は侵害主体に準じるものと評価できるから、同法112条1項の「著作権を侵害する者又は侵害するおそれがある者」に当たるものと解するのが相当である。」

■選撮見録(よりどりみどり)事件(大阪地裁平成17年10月24日)

この事件では、被告の販売する集合住宅向けハードディスクビデオレコーダーシステムに対する差止請求の可否が問題となりましたが、大阪地裁は、著作権法112条1項の類推適用により、差止めを認めました。

「〔1〕被告商品の販売は、これが行われることによって、その後、ほぼ必然的に原告らの著作隣接権の侵害が生じ、これを回避することが、裁判等によりその侵害行為を直接差し止めることを除けば、社会通念上不可能であり、〔2〕裁判等によりその侵害行為を直接差し止めようとしても、侵害が行われようとしている場所や相手方を知ることが非常に困難なため、完全な侵害の排除及び予防は事実上難しく、〔3〕他方、被告において被告商品の販売を止めることは、実現が容易であり、〔4〕差止めによる不利益は、被告が被告商品の販売利益を失うことに止まるが、被告商品の使用は原告らの放送事業者の複製権及び送信可能化権の侵害を伴うものであるから、その販売は保護すべき利益に乏しい。このような場合には、侵害行為の差止め請求との関係では、被告商品の販売行為を直接の侵害行為と同視し、その行為者を「著作隣接権を侵害する者又は侵害するおそれのある者」と同視することができるから、著作権法112条1項を類推して、その者に対し、その行為の差止めを求めることができるものと解するのが相当である。」