特許取得手続の流れ

1.特許出願

 法令で定められた所定の書類(出願書類)を特許庁に提出します。 通常、次の書類からなる一式の出願書類を提出します。

(1) 特許願(願書):出願人・発明者等の情報を記載
(2) 明細書:権利を取りたい発明についての技術的説明
   (背景技術・発明が解決しようとする課題・課題を解決するための手段・発明の効果等)を記載
(3) 特許請求の範囲:権利を取りたい発明の範囲を記載
(4) 図面:発明を説明するための図面(写真)を記載(必要に応じて提出)
(5) 要約書:権利を取りたい発明の概要を記載

2.方式審査

 出願書類が、法令で定められた所定の方式的要件を満たすかどうかのチェックがなされます。これはあくまで方式要件の審査であり、特許性に関する実体的要件の審査(実体審査)とは異なります。不備がある場合は、補正指令が発せられ、又は出願却下となります。

3.出願公開

 出願日から1年6月を経過した後に、出願書類が公開されます。なお、出願から1年6月を経過する前であっても、出願人が希望する場合にその申請により出願公開を行ってもらうこともできます(早期出願公開制度)。

4.出願審査請求

 出願審査請求がなされた出願についてのみ特許性に関する実体的要件の審査(実体審査)が行われます。出願人だけでなく第三者がすることもできます。審査請求料の支払いが必要です。出願から3年以内であればいつでもすることができます。

5.早期審査申請(スーパー早期審査申請)

 一定の要件の下、審査を通常に比べて早期に行ってもらうことができます。上記要件を満たす旨の説明を記載した事情説明書を出願人が提出する必要があります。また、他の要件をさらに満たせば、通常の早期審査に代えてスーパー早期審査の申請を行うこともできます。これにより、現行の早期審査と比較して、より早期に審査段階での最終結果を得ることができるとされています。
 なお、詳細については、「出願審査請求・早期審査・スーパー早期審査・早期審理」を参照下さい。

6.情報提供

 特許出願がなされた後は、特許付与後であるかにかかわらず、何人も、いつでも特許性を否定すると思われる情報を提供することができます。誰でもすることができます。匿名ですることもできる。拒絶理由や無効理由のうち、新規性欠如・進歩性欠如・記載要件違反等の特定のものに関する情報を提供することができます。

7.実体審査

 特許庁の審査官によって行われます。
 審査官は、法律で規定された拒絶理由がないかどうかを検討します。拒絶理由があると審査官が認めた場合には、「拒絶理由通知書」が通知されます。この場合、出願人は、拒絶理由を解消するために、「意見書」、「手続補正書」を提出することができます。拒絶理由がないと審査官が認めた場合には「特許査定」が通知されます。拒絶理由があると審査官が最終的に判断した場合には、「拒絶査定」が通知されます。

8.拒絶査定不服審判

 拒絶査定に不服があるときは、拒絶査定不服審判を請求することができます。

 拒絶査定不服審判の請求時に補正をした場合には、原則として審査を担当したのと同一の審査官が再び特許性について審査を行います(前置審査)。
 先ず審判請求時の補正が適法なものであったかの審査が行われ、続いて補正後の発明(補正が不適法であると判断された場合は補正前の発明)について実体審査が行われます。拒絶理由がない場合は特許査定がなされ、拒絶理由が解消しない場合は、長官報告がなされます。長官報告がなされた後は、3名又は5名の審判官の合議体による審理に移ります。
 拒絶査定不服審判の請求時に補正をしなかった場合には、前置審査は行われずに、審判官合議体による審理が行われます。
 審理の結果、拒絶理由が解消したと判断される場合には特許審決がなされます。一方、拒絶理由が解消されず特許できないと判断される場合には、拒絶審決がなされます。

9.特許査定・設定登録

 特許査定がされた後、出願人が特許料を納めることによって、特許原簿への設定登録がなされ特許権が発生します。

10.特許異議の申立て

 特許権が設定登録された後であっても取消理由があると思われる場合、何人も特許異議の申立てをすることができます。特許異議申立ての審理は、3名又は5名の審判官の合議体によって行われます。
 審理の結果、取消理由があると判断された場合は、取消決定が行われます。一方、取消理由がないと判断された場合は、維持決定が行われます。

11.無効審判

 特許権が設定登録された後であっても無効理由があると思われる場合、利害関係人は無効審判を請求することができます。無効審判請求の審理は、3名又は5名の審判官の合議体によって行われます。
 審理の結果、無効理由があると判断された場合は、特許無効の審決が行われます。一方、無効理由がないと判断された場合は、特許の維持の審決が行われます。

12.審決取消訴訟

 拒絶査定不服審判の拒絶審決に対して不服がある出願人は、その審決の取消しを求めて知的財産高等裁判所に出訴することができます。なお、特許異議申立てでの取消決定に対して不服がある特許権者等や、特許無効審判の審決に対して不服がある当事者も同様に出訴することができます。


Last Update: April 23, 2021

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