著作権法では、一定の例外的場合には、著作権が制限され、著作権者の承諾なしに著作物を利用することはできる旨規定されています。
個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とする複製については、著作権の効力は及びません(著30条1項)。 [肯定例] 自宅で聞くために、CDをMDにダビングする行為 [否定例] 会社内部において新聞記事をコピーする行為 もっとも、以下の場合には、私的使用目的の複製であっても、著作権の効力が及びます。(1)公衆の用に供されている自動複製機器を用いる場合(著30条2項1号)[例] 店頭においてあるダビング機を利用してビデオをダビングする行為ただし、文書・図画専用機(コンビニのコピー機など)は当分の間、同号の適用対象外とされています(附則5条の2)(2)プロテクト(技術的保護手段)を回避して可能になったコピーを悪意で行う場合(著30条2項2号)※ 私的録音録画補償金制度 私的複製であっても、デジタル録音・録画を行う者は補償金を支払わなければいけないとされています(著30条3項)。この補償金の徴収に関しては、集中管理方式が採用されており、私的録音補償金については私的録音補償金管理協会(SARAH)が、私的録画補償金については私的録画補償金管理協会(SARVH)が、録音、録画機器および媒体の販売に際し、一定額を徴収するしくみがとられています。
政令で定められた図書館は、次のいずれかの場合、営利を目的としない事業として、図書館の資料を用いて、著作物を複製することができます(著31条)。 (1) 図書館等の利用者の求めに応じ、その調査研究の用に供するために、公表された著作物の一部分(発行後相当期間を経過した定期刊行物に掲載された著作物については全部でもよい)の複製物を一人につき一部提供する場合 (2)図書館資料の保存のために必要がある場合 (3)他の図書館の求めに応じ、絶版等により一般に入手が困難な図書館資料の複製物を提供する場合
公表された著作物は、引用して利用することができます。ただし、引用は、公正な慣行に合致し、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならないとされています(著32条1項)。引用の要件に関し、判例は、(1)明瞭区別性(引用側と被引用側が明瞭に区別されていること)、(2)主従関係(引用側が主、被引用側が従の関係にあること)との2要件が必要であるとの立場をとっています。 [肯定例] 他人の論文を「」で引用して論評 [否定例] 他人のメロディを自分の曲に取り込む場合【参考裁判例】・パロディ・モンタージュ事件(最判昭和55年3月28日)・脱ゴーマニズム宣言事件(東京高判平成12年4月25日)
公表された著作物は、学校教育の目的上必要と認められる限度において、教科用図書に掲載することができます(著33条1項)。 ただし、その場合、その旨を著作者に通知するとともに、著作権者への補償金の支払いが必要となります(著33条2項)。
弱視の児童または生徒のために、既存の検定教科書の文字や図形を拡大して拡大教科書を作成する行為には著作権の効力は及びません(著33条の2第1項)。 ただし、大部分を複製する場合には、教科書会社に通知が必要となります。また、営利目的で行う場合には著作権者への補償金の支払いが必要となります(著33条の2第2項)。
学校教育の目的上必要と認められる限度で、学校教育番組の中で著作物を放送、有線放送する行為には著作権の効力は及びません(著34条1項)。 ただし、その場合、その旨を著作者に通知するとともに、著作権者への補償金の支払いが必要となります(著34条2項)。
学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における使用に供することを目的とする場合には、必要と認められる限度において、公表された著作物を複製することができます(著35条1項)。 同項の適用を受けるためには以下の要件を満たす必要があります。(1)営利を目的としない教育機関であること(2)授業等を担当する教職員自信が複製すること(3)本人の授業で使用すること(4)必要な限度の部数であること(5)既に公表された著作物であること(6)その著作物の種類や用途などから判断して、著作権者の利益を不当に害さないこと[肯定例] 学校の先生が教材として新聞記事をコピー配付[否定例] 市販されている算数の問題集をクラス全員にコピーして配布
学校その他の教育機関で遠隔教育(主会場と副会場がある場合)が行われる場合に、主会場で提供されている教材を副会場に公衆送信する行為には著作権の効力は及びません(著35条2項)。
公表された著作物を入学試験、検定試験等のために複製する行為には、著作権の効力は及びません(著36条1項)。[肯定例] 入試問題として小説を転載ただし、営利目的の場合(受講料を徴収して行う模擬試験など)には著作権者への補償金の支払いが必要となります(著36条2項)。
公表された著作物を、インターネット試験の実施のために利用する場合にも、著作権の効力は及びません(著36条1項)。
公表された著作物の点字による複製、点字データの作成・公衆送信、点字図書館等による録音サービスには、著作権の効力は及びません(著37条)。
政令で定める施設が、聴覚障害者のために、放送番組・有線放送番組のリアルタイム字幕を送信する行為には、著作権の効力は及びません(著37条の2)。
公表された著作物を非営利かつ、無料、無報酬で上演、演奏、上映、口述する行為には、著作権の効力は及びません(著38条1項)。[肯定例] 学園祭におけるライブ演奏や映画上映また、著作権法38条2項~5項によれば、以下の行為にも著作権の効力は及ばないとされています。(1)非営利かつ無料による放送番組の有線放送(著38条2項)(2)非営利かつ無料(または家庭用受信装置)による放送番組の公衆伝達(著38条3項) [例] ラーメン屋にテレビを設置し、テレビ番組を客に見せること(3)非営利かつ無料による著作物(映画の著作物を除く)の貸与(著38条4項) [例] 図書館における本の貸与(4)政令で定める施設における非営利かつ無料による映画の著作物の貸与(著38条5項)ただし、この場合、著作者に補償金を支払う必要があります。 [例] 図書館におけるビデオの貸与【参考裁判例】・社交ダンス教室事件(名古屋高判平成16年3月4日)
新聞等に掲載された時事問題に関する論説は、禁止の表現がない限り、他の新聞等に転載することができます。また、放送、有線放送し、受信装置を用いて公衆に伝達することができます(著39条)。
公開の場で行われた政治上の演説・陳述、裁判での公開の陳述は、1人のものを編集して利用する場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができます(著40条1項)。また、公の機関における公開の演説・陳述は、報道のために新聞等に掲載することができるほか、放送・有線放送し、受信装置を用いて公に伝達することができます(著40条2項)。
時事の事件を報道する場合、その事件の過程で見られ、聞かれる著作物を報道に伴って利用することができます(著41条)。 [例] 絵画の盗難事件の報道に際して、当該絵画を放送したり、新聞に掲載すること
裁判手続のために必要な場合や、立法・行政の内部資料として必要な場合には著作物を複製することができます。ただし、著作権者の利益を不当に害する場合には、著作権侵害が成立します(著42条)。
情報公開法等に基づき情報を開示する場合、必要な限度で著作物を複製することが認められます(著42条の2)。
放送事業者・有線放送事業者は、放送のための技術的手段として、著作物を一時的に録音・録画することができます(著44条)。
美術の著作物や写真の著作物の原作品の所有者は、その作品を公に展示することができます(著45条1項)。 ただし、一般公衆に開放されている屋外の場所(街路、公園等)や一般公衆の見やすい屋外の場所(建物の外壁等)に恒常的に設置する場合には著作権侵害が成立します(著45条2項)。
一般公衆の見やすい屋外の場所に恒常的に設置されている美術の著作物や建築の著作物は、方法を問わず利用することができます(著46条)。 ただし、以下の場合には、著作権侵害が成立します。(1)彫刻を増製する場合(2)建築の著作物を建築により複製する場合(3)屋外の場所に恒常的に設置するために複製する場合(4)美術の著作物を販売目的で複製し、それを販売する行為
美術の著作物や写真の著作物の原作品を適法に展示する者は、観覧者向けの解説、紹介用の小冊子に、展示する著作物を転載することができます(著47条)。[肯定例] 展覧会に際してカタログに展示品を小さく複製すること [否定例] 展示品の画集を作成すること
プログラムの所有者は、自らコンピュータで利用する場合、バックアップコピーやプログラムの修正、改良を行うために、プログラムを複製、翻案することができます(著47条の2)。
制限規定が適用される一定の場合、翻訳、翻案等によってこれらを行うことも許容されます(著43条)。 【著作権法43条】 次の各号に掲げる規定により著作物を利用することができる場合には、当該各号に掲げる方法により、当該著作物を当該各号に掲げる規定に従って利用することができる。一 第30条第1項、第33条第1項・・、第34条第1項又は第35条 翻訳、編曲、変形又は翻案二 第31条第1号、第32条、第36条、第37条、第39条第1項、第40条第2項、第41条又は第42条 翻訳三 第37条の2 翻案(要約に限る。) この規定との関係では、いわゆる要約引用の可否(引用に際して、被引用文献を要約することができるか)が問題となります。同条2号は翻訳による引用を許容する旨規定していますが、翻案による引用を許容する規定は存在しないためです。この問題につき、従来の通説は、要約引用は許されないとの立場をとっていますが、「血液型と性格」事件の東京地裁判決は要約引用を許容する判断を下しています。【参考裁判例】・「血液型と性格」事件(東京地判平成10年10月30日)
制限規定が適用される場合のうち、一定の場合には、出所の明示が要求されます(著48条)。 例えば、他人の論文を引用して掲載する場合には、引用する論文の著作者名、タイトル、掲載雑誌名、巻号を明示する必要があります。 なお、本条に違反して出所の明示がなされなかった場合、罰則(著122条)は科されますが、著作権侵害が成立するわけではありません。 同条によって、出所の明示が要求されるのは以下の場合です。(1)引用(32条)(2)教科用図書への掲載(33条)(3)拡大教科書への掲載(33条の2)(4)学校教育番組での放送等(34条)(5)教育機関における複製等(35条1項) - 慣行がある場合のみ(6)教育機関での送信(35条2項) - 慣行がある場合のみ(7)試験問題としての複製(36条1項) - 慣行がある場合のみ(8)試験問題としての送信(36条2項) - 慣行がある場合のみ(9)点字による複製、点字図書館等による録音サービス(37条)(10)聴覚障害者のための自動公衆送信(37条の2)(11)非営利上演等(38条1項)(12)時事問題に関する論説の転載等(39条)(13)政治上の演説等の利用(40条)(14)時事の事件の報道のための利用(41条) - 慣行がある場合のみ(16)公開の美術の著作物等の利用(46条) - 慣行がある場合のみ(17)美術展の小冊子への転載(47条)
制限規定によって複製されたものは、原則として、その目的以外に使用することはできません(著49条)。 例えば、CDの音楽をMDに私的複製したものを事後的にネットオークションで不特定人に販売した場合には、著作権侵害が成立することになります。
前述の制限規定は、著作者人格権に影響を及ぼすものと解釈してはならないとされています(著50条)。 例えば、私的複製に伴う翻案が許されるとしても(著43条1号)、これによる改変が同一性保持権侵害にあたるか否か別個に判断されることになります。
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意匠
商標
著作権
その他
5.権利制限
著作権法では、一定の例外的場合には、著作権が制限され、著作権者の承諾なしに著作物を利用することはできる旨規定されています。
1)個別規定
(1) 私的使用のための複製
個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とする複製については、著作権の効力は及びません(著30条1項)。
[肯定例] 自宅で聞くために、CDをMDにダビングする行為
[否定例] 会社内部において新聞記事をコピーする行為
もっとも、以下の場合には、私的使用目的の複製であっても、著作権の効力が及びます。
(1)公衆の用に供されている自動複製機器を用いる場合(著30条2項1号)
[例] 店頭においてあるダビング機を利用してビデオをダビングする行為
ただし、文書・図画専用機(コンビニのコピー機など)は当分の間、同号の適用対象外とされています(附則5条の2)
(2)プロテクト(技術的保護手段)を回避して可能になったコピーを悪意で行う場合(著30条2項2号)
※ 私的録音録画補償金制度
私的複製であっても、デジタル録音・録画を行う者は補償金を支払わなければいけないとされています(著30条3項)。この補償金の徴収に関しては、集中管理方式が採用されており、私的録音補償金については私的録音補償金管理協会(SARAH)が、私的録画補償金については私的録画補償金管理協会(SARVH)が、録音、録画機器および媒体の販売に際し、一定額を徴収するしくみがとられています。
(2) 図書館における複製
政令で定められた図書館は、次のいずれかの場合、営利を目的としない事業として、図書館の資料を用いて、著作物を複製することができます(著31条)。
(1) 図書館等の利用者の求めに応じ、その調査研究の用に供するために、公表された著作物の一部分(発行後相当期間を経過した定期刊行物に掲載された著作物については全部でもよい)の複製物を一人につき一部提供する場合
(2)図書館資料の保存のために必要がある場合
(3)他の図書館の求めに応じ、絶版等により一般に入手が困難な図書館資料の複製物を提供する場合
(3) 引用
公表された著作物は、引用して利用することができます。ただし、引用は、公正な慣行に合致し、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならないとされています(著32条1項)。
引用の要件に関し、判例は、(1)明瞭区別性(引用側と被引用側が明瞭に区別されていること)、(2)主従関係(引用側が主、被引用側が従の関係にあること)との2要件が必要であるとの立場をとっています。
[肯定例] 他人の論文を「」で引用して論評
[否定例] 他人のメロディを自分の曲に取り込む場合
【参考裁判例】
・パロディ・モンタージュ事件(最判昭和55年3月28日)
・脱ゴーマニズム宣言事件(東京高判平成12年4月25日)
(4) 教科用図書への複製
公表された著作物は、学校教育の目的上必要と認められる限度において、教科用図書に掲載することができます(著33条1項)。 ただし、その場合、その旨を著作者に通知するとともに、著作権者への補償金の支払いが必要となります(著33条2項)。
(5) 拡大教科書の作成
弱視の児童または生徒のために、既存の検定教科書の文字や図形を拡大して拡大教科書を作成する行為には著作権の効力は及びません(著33条の2第1項)。 ただし、大部分を複製する場合には、教科書会社に通知が必要となります。また、営利目的で行う場合には著作権者への補償金の支払いが必要となります(著33条の2第2項)。
(6) 学校教育番組での放送等
学校教育の目的上必要と認められる限度で、学校教育番組の中で著作物を放送、有線放送する行為には著作権の効力は及びません(著34条1項)。 ただし、その場合、その旨を著作者に通知するとともに、著作権者への補償金の支払いが必要となります(著34条2項)。
(7) 教育機関における複製等
学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における使用に供することを目的とする場合には、必要と認められる限度において、公表された著作物を複製することができます(著35条1項)。
同項の適用を受けるためには以下の要件を満たす必要があります。
(1)営利を目的としない教育機関であること
(2)授業等を担当する教職員自信が複製すること
(3)本人の授業で使用すること
(4)必要な限度の部数であること
(5)既に公表された著作物であること
(6)その著作物の種類や用途などから判断して、著作権者の利益を不当に害さないこと
[肯定例] 学校の先生が教材として新聞記事をコピー配付
[否定例] 市販されている算数の問題集をクラス全員にコピーして配布
(8) 教育機関での送信
学校その他の教育機関で遠隔教育(主会場と副会場がある場合)が行われる場合に、主会場で提供されている教材を副会場に公衆送信する行為には著作権の効力は及びません(著35条2項)。
(9) 試験問題としての複製
公表された著作物を入学試験、検定試験等のために複製する行為には、著作権の効力は及びません(著36条1項)。
[肯定例] 入試問題として小説を転載
ただし、営利目的の場合(受講料を徴収して行う模擬試験など)には著作権者への補償金の支払いが必要となります(著36条2項)。
(10) 試験問題としての送信
公表された著作物を、インターネット試験の実施のために利用する場合にも、著作権の効力は及びません(著36条1項)。
(11) 点字による複製等
公表された著作物の点字による複製、点字データの作成・公衆送信、点字図書館等による録音サービスには、著作権の効力は及びません(著37条)。
(12) 聴覚障害者のための自動公衆送信
政令で定める施設が、聴覚障害者のために、放送番組・有線放送番組のリアルタイム字幕を送信する行為には、著作権の効力は及びません(著37条の2)。
(13) 非営利上演等
公表された著作物を非営利かつ、無料、無報酬で上演、演奏、上映、口述する行為には、著作権の効力は及びません(著38条1項)。
[肯定例] 学園祭におけるライブ演奏や映画上映
また、著作権法38条2項~5項によれば、以下の行為にも著作権の効力は及ばないとされています。
(1)非営利かつ無料による放送番組の有線放送(著38条2項)
(2)非営利かつ無料(または家庭用受信装置)による放送番組の公衆伝達(著38条3項)
[例] ラーメン屋にテレビを設置し、テレビ番組を客に見せること
(3)非営利かつ無料による著作物(映画の著作物を除く)の貸与(著38条4項)
[例] 図書館における本の貸与
(4)政令で定める施設における非営利かつ無料による映画の著作物の貸与(著38条5項)ただし、この場合、著作者に補償金を支払う必要があります。
[例] 図書館におけるビデオの貸与
【参考裁判例】・社交ダンス教室事件(名古屋高判平成16年3月4日)
(14) 時事問題に関する論説の転載等
新聞等に掲載された時事問題に関する論説は、禁止の表現がない限り、他の新聞等に転載することができます。また、放送、有線放送し、受信装置を用いて公衆に伝達することができます(著39条)。
(15) 政治上の演説等の利用
公開の場で行われた政治上の演説・陳述、裁判での公開の陳述は、1人のものを編集して利用する場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができます(著40条1項)。また、公の機関における公開の演説・陳述は、報道のために新聞等に掲載することができるほか、放送・有線放送し、受信装置を用いて公に伝達することができます(著40条2項)。
(16) 時事の事件の報道のための利用
時事の事件を報道する場合、その事件の過程で見られ、聞かれる著作物を報道に伴って利用することができます(著41条)。
[例] 絵画の盗難事件の報道に際して、当該絵画を放送したり、新聞に掲載すること
(17) 立法、司法、行政のための複製
裁判手続のために必要な場合や、立法・行政の内部資料として必要な場合には著作物を複製することができます。ただし、著作権者の利益を不当に害する場合には、著作権侵害が成立します(著42条)。
(18) 情報公開法等における開示のための複製
情報公開法等に基づき情報を開示する場合、必要な限度で著作物を複製することが認められます(著42条の2)。
(19) 放送事業者等による一時的固定
放送事業者・有線放送事業者は、放送のための技術的手段として、著作物を一時的に録音・録画することができます(著44条)。
(20) 美術の著作物等の原作品の所有者による展示
美術の著作物や写真の著作物の原作品の所有者は、その作品を公に展示することができます(著45条1項)。 ただし、一般公衆に開放されている屋外の場所(街路、公園等)や一般公衆の見やすい屋外の場所(建物の外壁等)に恒常的に設置する場合には著作権侵害が成立します(著45条2項)。
(21) 公開の美術の著作物等の利用
一般公衆の見やすい屋外の場所に恒常的に設置されている美術の著作物や建築の著作物は、方法を問わず利用することができます(著46条)。
ただし、以下の場合には、著作権侵害が成立します。
(1)彫刻を増製する場合
(2)建築の著作物を建築により複製する場合
(3)屋外の場所に恒常的に設置するために複製する場合
(4)美術の著作物を販売目的で複製し、それを販売する行為
(22) 美術展の小冊子への転載
美術の著作物や写真の著作物の原作品を適法に展示する者は、観覧者向けの解説、紹介用の小冊子に、展示する著作物を転載することができます(著47条)。
[肯定例] 展覧会に際してカタログに展示品を小さく複製すること
[否定例] 展示品の画集を作成すること
(23) プログラムの所有者による複製等
プログラムの所有者は、自らコンピュータで利用する場合、バックアップコピーやプログラムの修正、改良を行うために、プログラムを複製、翻案することができます(著47条の2)。
2)通則的規定
(1) 翻訳・翻案等による利用
制限規定が適用される一定の場合、翻訳、翻案等によってこれらを行うことも許容されます(著43条)。
【著作権法43条】
次の各号に掲げる規定により著作物を利用することができる場合には、当該各号に掲げる方法により、当該著作物を当該各号に掲げる規定に従って利用することができる。
一 第30条第1項、第33条第1項・・、第34条第1項又は第35条 翻訳、編曲、変形又は翻案
二 第31条第1号、第32条、第36条、第37条、第39条第1項、第40条第2項、第41条又は第42条
翻訳
三 第37条の2 翻案(要約に限る。)
この規定との関係では、いわゆる要約引用の可否(引用に際して、被引用文献を要約することができるか)が問題となります。同条2号は翻訳による引用を許容する旨規定していますが、翻案による引用を許容する規定は存在しないためです。この問題につき、従来の通説は、要約引用は許されないとの立場をとっていますが、「血液型と性格」事件の東京地裁判決は要約引用を許容する判断を下しています。
【参考裁判例】・「血液型と性格」事件(東京地判平成10年10月30日)
(2) 出所の明示
制限規定が適用される場合のうち、一定の場合には、出所の明示が要求されます(著48条)。 例えば、他人の論文を引用して掲載する場合には、引用する論文の著作者名、タイトル、掲載雑誌名、巻号を明示する必要があります。
なお、本条に違反して出所の明示がなされなかった場合、罰則(著122条)は科されますが、著作権侵害が成立するわけではありません。
同条によって、出所の明示が要求されるのは以下の場合です。
(1)引用(32条)
(2)教科用図書への掲載(33条)
(3)拡大教科書への掲載(33条の2)
(4)学校教育番組での放送等(34条)
(5)教育機関における複製等(35条1項) - 慣行がある場合のみ
(6)教育機関での送信(35条2項) - 慣行がある場合のみ
(7)試験問題としての複製(36条1項) - 慣行がある場合のみ
(8)試験問題としての送信(36条2項) - 慣行がある場合のみ
(9)点字による複製、点字図書館等による録音サービス(37条)
(10)聴覚障害者のための自動公衆送信(37条の2)
(11)非営利上演等(38条1項)
(12)時事問題に関する論説の転載等(39条)
(13)政治上の演説等の利用(40条)
(14)時事の事件の報道のための利用(41条) - 慣行がある場合のみ
(16)公開の美術の著作物等の利用(46条) - 慣行がある場合のみ
(17)美術展の小冊子への転載(47条)
(3) 目的外使用
制限規定によって複製されたものは、原則として、その目的以外に使用することはできません(著49条)。 例えば、CDの音楽をMDに私的複製したものを事後的にネットオークションで不特定人に販売した場合には、著作権侵害が成立することになります。
(4) 著作者人格権との関係
前述の制限規定は、著作者人格権に影響を及ぼすものと解釈してはならないとされています(著50条)。 例えば、私的複製に伴う翻案が許されるとしても(著43条1号)、これによる改変が同一性保持権侵害にあたるか否か別個に判断されることになります。
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