著作者の権利

7.著作権侵害に対する救済

1)著作権を侵害する行為

(1) 原則

正当な理由なく、許諾を得ずに他人の著作物を利用した場合、著作権侵害となります。

(2) みなし侵害

次の行為は、著作権侵害行為とみなされます(著113条)。

(1)頒布目的で違法複製物を輸入する行為
(2)違法複製物を、情を知って頒布、または、頒布目的で所持する行為
(3)プログラムの違法複製物を業務上使用する行為
  (使用権原取得時に情を知っていた場合に限る)
(4)権利管理情報として虚偽の情報を故意に付加する行為、権利管理情報を故意に除去または改変する行為、これらの複製物を情を知って頒布、頒布目的で輸入・所持、または、公衆送信・送信可能化をする行為
(5)国外頒布目的の商業用レコードを輸入する行為

2)著作権侵害の救済

著作権侵害があった場合、著作権者は、以下に示す民事上、刑事上の救済措置をとることができます。

(1) 差止請求

著作権が侵害された場合、著作権者は侵害者に対し、侵害の停止・予防を求めることができます(著112条1項)。また、これと併せて、侵害行為を組成した物等の廃棄等、侵害の停止・予防に必要な措置を請求することができます(著112条2項)。

※ 侵害幇助者に対する差止請求 差止請求は、特許法等においても同様に認められるものですが、著作権法では特許法とは異なり間接侵害の規定が存在しないため、侵害行為を直接行っていない侵害幇助者に対し、差止請求を認めるべきか否かが解釈論上問題となっています。この点、近時の大阪地裁の裁判例の中には、侵害幇助者に対し、著作権法112条を適用ないし類推適用することで、差止請求を認めるものが登場し、注目を集めています。

【参考裁判例】
・ヒットワン事件(大阪地裁平成15年2月13日)
・選撮見録(よりどりみどり)事件(大阪地裁平成17年10月24日)

(2) 損害賠償請求

侵害行為によって損害が生じている場合、損害賠償を請求することができます(民法709条)。なお、損害額の立証は困難であるため、損害額の推定規定が設けられています(著114条)。

※ カラオケリース業者の損害賠償責任カラオケリース業者がカラオケ装置を納入したスナック等が著作権使用料の支払を怠った場合、カラオケリース業者自体は法的責任を負うのでしょうか。この点、カラオケリース業者は、著作権侵害行為の直接の主体ではありませんが、最高裁は、カラオケリース業者は納入先が著作権者との間で著作権使用許諾契約を締結したことを確認した上でカラオケ装置を引き渡す義務を負うとした上で、当該義務の違反を理由に損害賠償請求を認めています。

【参考裁判例】・ビデオメイツ事件(最判平成13年3月2日)

(3) 不当利得返還請求

損害賠償の時効(侵害から3年)経過後は、不当利得返還請求によって、自己の受けた損失を補填することができます(民法703条)

(4) 著作者人格権侵害があった場合の原状回復措置

著作者人格権が侵害された場合、著作者は自らの名誉・声望を回復するための措置(謝罪広告等)を請求することができます(著115条)。

(5) 著作権侵害罪

故意による侵害については、刑事告訴をして刑事上の責任を問うこともできます(著119条)。

侵害品を発見した場合、まず、内容証明郵便にて警告書を送るのが通例です。また、裁判に発展した場合を考慮して、侵害品の現物や写真を集めたり、侵害品の販路、売上等に関する情報を収集しておかれることも重要です。

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