海外での権利取得

4.欧州共同体意匠制度

ヨーロッパ諸国での意匠権の取得を希望する場合は、欧州共同体意匠の制度を利用する方法があります。日本国民および日本企業はパリ条約加盟国の国民に該当するため、欧州共同体意匠制度における出願人適格を有します。

1)欧州共同体意匠制度の概要

「登録共同体意匠」と「無登録共同体意匠」の2つの制度があります。

(1)登録共同体意匠制度:
欧州連合知的財産庁(EUIPO:European Union Intellectual Property Office)への1つの出願によりEU加盟国全体をカバーする意匠権の取得が可能な制度

(2)無登録共同体意匠制度:
意匠が公衆に利用可能な状態になっていることを条件として、出願手続等とは関係なく一定の要件を満たすことにより、その意匠の保護を受けることができる制度(日本における不正競争防止法上の保護と同様の制度)

2)どのような国で保護されるのか?

EU加盟国である以下の27カ国において保護されます。



3)どのような意匠が保護されるのか?

製品の外観であることが必要です。
製品の外観であれば、製品全体または部分を問わず保護を受けることができます。

4)登録共同体意匠制度の概要

(1)どのような手続をとるのか?


①出願
EUIPOもしくは各加盟国の特許庁に出願します。

② 審査
方式審査と、実体的要件のうち、出願意匠が保護を受ける意匠の定義に合致しているか、公序良俗に反していないかのみ審査されます。
なお、出願意匠が意匠の定義や公序良俗に反する旨の拒絶理由が送達された場合、出願人には意見書・補正書を提出する機会が与えられます。

③ 出願公告
審査を通過した出願は共同体意匠官報(Community Designs Bulletin)に公告され、意匠権者には登録証が発行されます。

(2)権利の存続期間
出願日から最長25年(ただし、5年を単位として4回の更新が必要)

(3)出願から登録までに要する期間
拒絶理由がない場合、出願から約3カ月後に登録を受けることができます。

(4)登録共同体意匠の保護要件(実体的要件)
① 新規性があること
同一の意匠が出願日前に公衆の利用に供せられていないこと。
(「同一」とは、完全に同一の意匠、重要でない細部においてのみ異なる意匠を意味します。)

②独自性があること
情報に通じた使用者に与える全体的な印象が、先行意匠から創作された全体的印象と異なっていること。


5)登録共同体意匠制度のメリットとデメリット


登録共同体意匠制度には、以下のようなメリットとデメリットがあります。
これらをよく検討されたうえで出願手続をとられることをお勧めします。

(1)メリット
①1つの出願で欧州共同体全体をカバーする意匠権の取得が可能

② 更新の手続が一元化でき、意匠権の管理が容易である

(2)デメリット
① 無効の効力は欧州共同体27カ国全体に及ぶ
無効の請求により意匠登録が無効となった場合、当該無効の宣言は欧州連合全体に対し適用され、当該意匠にかかる権利は存在しなかったものとみなされます。

② 国ごとに意匠権の譲渡ができない
意匠権の譲渡は、欧州共同体27カ国一括の譲渡となります。
ただし、ライセンスについては特定国のみにおいても可能です。

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