デザインを保護する他の法律

3.不正競争防止法による保護

不正競争防止法の混同惹起行為規制(2条1項1号)や形態模倣規制(2条1項3号)によっても商品のデザインは保護されます。

1)混同惹起行為規制(2条1項1号)

不正競争防止法2条1項1号は、他人の商品等表示として需要者の間で広く認識されているものと同一・類似の商品等表示を使用し、他人の商品または営業と混同を生じさせる行為を不正競争行為として規定しています。

商品の形態も、その特徴的な形態を一見しただけで、「あの会社の商品だ」と分かる程度に知られている場合には、「商品等表示」に該当し、不正競争防止法により保護されます。

本号によって、保護されるためには、以下の要件を満たす必要があります。

①商品表示性

  商品の形態が、商品の印として機能する必要があります。

②周知性

  商品の形態が需要者の間で広く認識されている必要があります。

③類似性

  商品形態が、全体として類似する必要があります。

④混同のおそれ

  需要者が両者の商品の間で混同を起こすおそれがあることが必要です。

2)形態模倣規制(2条1項3号)

不正競争防止法2条1項3号は、他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡等する行為を不正競争行為として規定しています。

そのため、商品の形態は、たとえ意匠権を取得していなかったとしても、本号によってある程度保護されます。

ただし、以下の点に注意が必要です。

①意図的な模倣に対してしか規制がおよびません。

 たまたま形態が似てしまった場合には、本号の規制は及びません。

②類似の形態にまで規制がおよびません。

 本号は、基本的には商品形態のデッドコピーを規制するための規定であり、類似の形態までは規制できません。

③最初に発売した日から3年しか規制できません。

 それ以降は、意匠権等で保護する必要があります。

④技術的機能的形態に対しては、規制がおよびません。

 技術的機能的形態を特定の者に独占させるのは産業政策上妥当ではないからです。

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デザインを長く、効果的に保護するには?




◆意外と(?)高額!意匠権侵害の賠償金

意匠権の侵害事件では、比較的高額の損害賠償金が認められてきています。昭和48年にホンダとスズキの間で争われたオートバイのデザインに関する意匠権侵害事件では、侵害者であるスズキに対し、7億6100万円もの賠償金の支払いが命じられています。また、神戸製鋼と加藤製作所の間で争われた自走式クレーン車に関する意匠権侵害事件では、4億5千万円の損害賠償額を命ずる判決が確定しています。さらに、オムロンヘルスケア株式会社と株式会社タニタの間で争われた体組成測定器に関する意匠権侵害事件では、第一審で1億3千万円の損害賠償を命ずる判決が下されました。(但し、知財高裁において最終的に和解)このような高額な賠償の事例からしても、意匠権の積極的な取得が必要だといえます。

 

 

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