-その(4) ライセンス契約について-(8)
その他の知的財産法解説:目次
- はじめに ―法務部門開設の案内およびその趣旨
- なぜ、書面による取り決めが必要になるのか(概説説明)
- 契約の必要性について -秘密保持契約-
- 契約の必要性について -共同研究(開発)契約-
- 契約の必要性について -オプション契約-
- 契約の必要性について -共同出願取扱契約-
- 契約の必要性について -下請契約と製造委託契約の違いについて-
- ライセンス契約(特許およびノウハウ)について -その(1)
- ライセンス契約(特許およびノウハウ)について -その(2)
- ライセンス契約(特許およびノウハウ)について -その(3)
- ライセンス契約及び共同研究契約と独占禁止法との関連について-その(1)
- ライセンス契約及び共同研究契約と独占禁止法との関連について-その(2)
- ライセンス契約及び共同研究契約と独占禁止法との関連について-その(3)
- 国際契約を締結するにあたって法制上の留意点-その(1) 米国における契約の概念
- -その(2) 技術移転に対する規制
- -その(3) 秘密保持契約および共同研究開発契約について-(1)
- -その(3) 秘密保持契約および共同研究開発契約について-(2)
- -その(4) ライセンス契約について-(1)
- -その(4) ライセンス契約について-(2)
- -その(4) ライセンス契約について-(3)
- -その(4) ライセンス契約について-(4)
- -その(4) ライセンス契約について-(5)
- -その(4) ライセンス契約について-(6)
- -その(4) ライセンス契約について-(7)
- -その(4) ライセンス契約について-(8)
- 特許侵害訴訟(特に日米比較を中心)について-(1)
- 特許侵害訴訟(特に日米比較を中心)について-(2)
- 特許侵害訴訟(特に日米比較を中心)について-(3)
- 不正競争防止法について-(1)
- 不正競争防止法について-(2)
- 著作権について
インドでは、明示的な特許に関する契約(権利譲渡、ライセンス、譲渡抵当権の設定、その他何らかの権利設定)については、その条件を具体化する文書の形で記載され、特許庁に登録することが効力発生要件になっていますので、注意しましょう。
ライセンス契約の登録にあたっては、特許局長は、ライセンス契約の期間、条件を審査するだけでなく、契約条項が外国為替規制、消費者保護規制、独占的・制限的取引慣行規則法等も遵守したものになっているかの検討も行いますので、他の国に比べて規制は厳しいとみるべきでしょう。
特許法140条では、違法となる制限規定について列挙しています。
以下のような制限は違法にならないとされております。
これにより、2009年12月16日以降は、日本企業を含むインド非居住者は、一括払い、継続払いを問わず、インド内国社からの実施料送金、支払受領について、上限規制を受けなくなった。
海外への対価送金に関する規制
(特許・ノウハウ等)
(実施料支払期間に関する制限はない)
韓国の法体制はほぼ日本と同様であると考えられますので、米国等と違って、日本企業としてはやりやすいと思われます。
ライセンス契約についての規制も日本とほぼ同じ体制です。ライセンス対象が特許の場合には、登録が効力発生要件となっている専用実施権も認められています(特許法100条)。つまり、日本と同様に契約上で独占的実施権を許諾されていても、それが専用実施権でない場合には、独自に侵害差止請求権等を行使することができませんので、ライセンシーの場合で、独占の権利の許諾を受けた場合には、それを専用実施権として要求するかどうかを検討する必要があります。
当該法による規制は日本とほぼ同じであり、不公正かつ不当な制限を設けると公正取引法違反になります。
公正取引委員会が2019年に改正した「知的財産権の不当な行為に対する審査指針」では、実施許諾時において、以下のような条件を賦課することは、不公正な取引に該当するとしております。
・ 原材料・部品等の購入先の制限
・ 輸出地域の制限
・ 取引相手の制限
・ 競争技術・製品の使用又は取扱制限
・ 特許等の権利消滅後の使用の制限
・ 販売価格の指定
・ 並行輸入の妨害
・ 技術改良及び研究開発の制限
・ 改良技術の移転等(独占権のリターン)
・抱き合わせ販売の強要
・ 契約解除の一方的条件賦課
・ 不争義務の賦課
一方の当事者が契約違反をした場合、他の当事者はその違反により蒙った損害に対して、損害賠償請求をすることができます。当該訴訟は、一般民事訴訟手続きにより審理されます。
ライセンス契約が解約された後も、ライセンシーが無断で対象特許を実施している場合には、ライセンサーは当然、ライセンシーに対して対象特許の実施(対象製品の製造及び販売)等を差止を請求することができます。
損害賠償と合わせて又は単独で本案訴訟を提起する場合もあります。
以 上 (この章完)