-その(4) ライセンス契約について-(5)
その他の知的財産法解説:目次
- はじめに ―法務部門開設の案内およびその趣旨
- なぜ、書面による取り決めが必要になるのか(概説説明)
- 契約の必要性について -秘密保持契約-
- 契約の必要性について -共同研究(開発)契約-
- 契約の必要性について -オプション契約-
- 契約の必要性について -共同出願取扱契約-
- 契約の必要性について -下請契約と製造委託契約の違いについて-
- ライセンス契約(特許およびノウハウ)について -その(1)
- ライセンス契約(特許およびノウハウ)について -その(2)
- ライセンス契約(特許およびノウハウ)について -その(3)
- ライセンス契約及び共同研究契約と独占禁止法との関連について-その(1)
- ライセンス契約及び共同研究契約と独占禁止法との関連について-その(2)
- ライセンス契約及び共同研究契約と独占禁止法との関連について-その(3)
- 国際契約を締結するにあたって法制上の留意点-その(1) 米国における契約の概念
- -その(2) 技術移転に対する規制
- -その(3) 秘密保持契約および共同研究開発契約について-(1)
- -その(3) 秘密保持契約および共同研究開発契約について-(2)
- -その(4) ライセンス契約について-(1)
- -その(4) ライセンス契約について-(2)
- -その(4) ライセンス契約について-(3)
- -その(4) ライセンス契約について-(4)
- -その(4) ライセンス契約について-(5)
- -その(4) ライセンス契約について-(6)
- -その(4) ライセンス契約について-(7)
- -その(4) ライセンス契約について-(8)
- 特許侵害訴訟(特に日米比較を中心)について-(1)
- 特許侵害訴訟(特に日米比較を中心)について-(2)
- 特許侵害訴訟(特に日米比較を中心)について-(3)
- 不正競争防止法について-(1)
- 不正競争防止法について-(2)
- 著作権について
まず、各国におけるライセンス規制や裁判管轄、準拠法などについてお話する前に ライセンス契約の内容のチェックについては、EC競争法(EU機能条約)が第一優先になります。EC競争法(EU機能条約)および関連するEC規制に違反しないことが先決となりますので、内容につき理解していただくために簡単にご説明していきましょう。
欧州各国とのライセンス契約がEU内の市場の通商に実質的な影響を及ぼす可能性があると判断される場合には、契約における準拠法に拘らずEU機能条約101条1項(競争制限的合意又は協調行為の禁止)が強行法規として適用されます。 当該条項に違反する契約である場合には、契約自体が自動的に無効になるだけでなく、欧州委員会から高額の過料を課される恐れがありますので、十分留意する必要があります。
このためには、まず、同条約の101条3項による一括免除(block exemption)の適用を受けるかどうかがポイントとなります(当該内容については、技術移転契約に関する一括免除規則をチェックする必要があります)。
以下の内容に合致するような条項を規定している場合には、上記の一括免除は受けられませんので、下記のような条項を欧州の企業に要求したり、また、逆に要求された場合には、EC競争法(EU機能条約)に違反することになりますので、まず、どのような条項が問題となるかについてのみ列挙してみましょう。
i ) 重大な違反行為を構成する契約条項(委員会規則772/2004号4条)
ii) 違法な契約条項(委員会規則772/2004号5条)
下記は上記a)における程重要ではないため、契約自体が無効になるのではなく、当該条項に限り違法・無効になります。
iii) 市場支配的地位の濫用の禁止(EU機能条約102条)
市場支配的地位というには、関連市場で1位であり、かつ、市場占有率が40%以上の場合の状況を指し、かかる場合には、原則として市場支配的地 位が認められる恐れがあります。従って、ライセンサーが市場支配的地位にある場合には、下記のような濫用行為が禁止されます。
(この章続く)