なぜ、書面による取り決めが必要になるのか(概説説明)
- なぜ、書面による取り決めが必要になるのか 日本では、米国のように契約主義国家ではないので、契約は口頭でも成立すると民法では規定されております。しかしながら、口約束だけでは、後で問題が生じた場合(約束の破棄、権利行使義務の放棄等)に対応が困難となるのは目にみえております。 現実の問題-たとえば、大学の先生が企業と共同で研究を実施した場合に、書面による取り決めがないため、企業で生まれた研究成果が共同研究によるものか、企業独自の研究成果によるものか、判断がつかないという事態が生じております。先生からすれば、当然、当該成果は、先生の技術情報がベースになっているものであり、共同研究の成果として、当該先生も発明者になりうると主張しても、根拠となる書面での取り決めがない場合には、先生を当該成果の発明者であると認定するのはとても難しいと思われます。 また、本来なら書面による取り決めで秘密保持義務を被開示者に課した上で、技術情報を開示すべきであるのに、取り決めなしで開示したため、相手方に勝手に活用されてしまったケースなど数えあげればきりがない程です。
- こんな場合には、やはり、事前にきちんとした取り決めをしておかないと、特に、立場の弱い中小企業やベンチャービジネス、大学の先生等はかならず、相手方のいいように利用されるだけになってしまいます。ましてや、特許、ノウハウ等重要な知的財産については、それだけでも重要な価値がある財産であるため、やはり慎重を期してことに望むべきでしょう。
- 契約には、事例の対象によってさまざまな取り決め様式がありますが、いずれも当事者間の合意事項を明確に文章化する目的は変わりません。米国では、とくに契約法の概念が明確に打ち出されているため、書面できっちりと合意事項をすべて記載するようになっています。したがって、書面上の記載がない事項については、例え、両者間で合意したものであっても法的な効力は生じないのです。日本では、まだまだ米国なみではないにしろ、両者間できちんと取り決めていない事項については、裁判で争うことになり、費用も手間もかかり、リスクも高くなります。
- ころばぬ先の杖として、書面での取り決めに慣れるようにしましょう。
- 次ページからは、各種契約のお話(契約の種類、留意する事項等)をさせていただきます。 まずは、国内における秘密保持契約からはじめることになります。