意匠の登録要件

2.今までにない新しい意匠であること(新規性)

出願時に、既に市場に出回っている意匠、あるいは刊行物に記載されたり、インターネットに掲載されたりした意匠と同一または類似の意匠は登録を受けることができません。既に社会に公開された意匠は需要を喚起せず、独占権を付与するとかえって産業の発達を阻害することになるからです。

以下の意匠と同一または類似の意匠は登録できません。

(1)日本または外国で公然知られた意匠

「公然知られた」とは不特定の者に秘密でないものとして現実に知られている状態をいいます。

(2)日本または外国で頒布された刊行物に記載された意匠

「頒布」とは刊行物が不特定の者が見うるような状態に置かれることをいい、現実に誰かがその刊行物を見たという事実は必要としません。
「刊行物」とは公開することを目的として複製された文書図画や情報伝達媒体をいいます。

(3)インターネット上で開示された意匠

意匠法では「電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠」と規定されています。

1)意匠の類否
  意匠の類似とは?

意匠の類似とは、同一または類似の物品等間において形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合(以下、「形状等」といいます。)が近似し、需要者の立場から見た美感が共通することをいいます。



(1) 物品の同一・類似

意匠とは物品等の形状等であることから、意匠の類似は、意匠に係る物品等の用途(使用目的、使用状態等)および機能が同一または類似であることを前提とします。

 ①同一物品とは、用途および機能が同一の物品をいいます。
 (例)赤鉛筆と青鉛筆

 ②類似物品とは、用途が同一で機能が異なる物品をいいます。
 (例)万年筆とボールペン

類似する物品等の範囲は、画一的に決めることのできないものであり、はっきりと固定されたものではありません。物品等の類似は、意匠公報や意匠分類表をもとに個別に判断せざるをえないのが実情です。

(2) 形態の同一・類似

形状等の類否の判断は次の手順で行われます。  

①観察方法 
意匠の類否判断は、意匠に係る物品等を観察する際に通常用いられる観察方法により行われます。肉眼による視覚観察が基本です。

②形状等および形状等における共通点および差異点の認定
 意匠に係る物品等全体の形状等(基本的構成態様)および各部の形状等における共通点および差異点を認定します。

③形状等の共通点および差異点の個別評価 
(Ⅰ)対比観察した場合に注意を引く部分か否かの認定およびその注意を引く程度の評価と、(Ⅱ)先行意匠群との対比に基づく注意を引く程度の評価が行われます。
 上記の評価に基づいて、各共通点および差異点が意匠全体の美感に与える影響の大きさが判断されます。

一般的には、

  (a) 物品等全体の形状等(基本的構成態様)が視覚的印象に与える影響は、最も大きい。
(b) 物品等自体の大きさの違いは、意匠の属する分野において常識的な範囲内であれば、ほとんど影響しない。
(c) 物品の用途(使用目的、使用状態等)及び機能、その大きさに基づいて、最も視覚観察されやすい部分の形状等は、注意を引きやすい。
(d) 使用時に目にすることのない内部の形状等は、意匠の特徴として考慮されないことが多い。
(e) 物品の流通時にのみ視覚観察される部分が注意を引く程度は、小さいことが多い。
(f) 色彩は、形状および模様よりも類否判断に与える影響が小さい。

 

例1:

見えやすい部分は、相対的に影響が大きい
(意匠に係る物品:テレビ受像機)

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例2: 大きさの違いは、当該意匠の属する分野において常識的な範囲内のものであれば、ほとんど影響をあたえない
(意匠に係る物品:自転車)
 

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