【メキシコ】最高裁判所がNAFTAに基づき特許権の存続期間補償を認める判決
2021年06月
メキシコの産業財産権法は、2020年11月5日に改正され、特許期間の調整(PTA:Patent Term Adjustment)制度が導入されました。これにより、メキシコ産業財産庁(IMPI)の審査遅延により、出願日から特許付与までの期間が5年以上であった場合、5年を限度として、特許期間調整の申請が可能となりました。
しかし、改正法施行日前の出願にかかる特許権の存続期間については、IMPIの審査遅延が生じた場合でもその期間を補償する規定はありません。
当該改正法施工日前の出願に係る特許権について、2020年10月14日、メキシコ最高裁は、NAFTA(北米自由貿易協定)には、「出願日から少なくとも20年間又は付与日から17年間の特許保護の期間を与えるものとする」と規定されているところ、MIIPの審査遅延に起因して、特許付与日から17年間の保護期間を享受できない場合は、その期間について補償されるべきであるとの判決を下しました。
(NAFTA 第1709条12項をご参照下さい。)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/nafta/nafta/chap5.html
現地代理人によりますと、この判決の効力は、訴訟当事者にしか及ばないものであり、いわゆる対世効を有しませんので、IMPIが当該判決を同様のケースについても適用し、裁判所の命令なしに特許権の存続期間を補償することは期待できません。しかし、NAFTAが有効であった期間(1994年1月1日~2020年6月30日)に出願された特許について、付与日から17年間の特許保護期間を享受できない場合は、この判決を引用し、MIIPに存続期間の補償を請求してみるのも一策であるようです。