【シンガポール】審査ガイドライン一部改訂-優先権及び単一性

2022年03月

先般、シンガポール知的財産局(IPOS)は、特許審査ガイドラインを一部改訂し、優先権の有効性の判断及び単一性欠如の拒絶理由が生じた場合の取り扱いを明確化しました。

1. 優先権の有効性
後の出願に係る発明(本願発明)について、先の出願に基づく優先権主張が有効であるか否かの判断においては、当業者の技術常識に照らし、先の出願が全体として直接かつ明確に、本願発明を開示しているか否かに焦点が当てられます。その開示は明示的なものだけでなく暗示的なものも含まれますが、当業者がその発明を実施するのに十分なものでなければなりません(実施可能要件)。
実施可能要件を満たすためには、先の出願が本願発明の取りうる実施形態のすべてを記載していることは必ずしも必要ではなく、当業者の技術常識に照らし、本願発明が優先権書類から直接かつ明確に導き出すことができればよいことが明確となりました。
従いまして、優先権の有効性が問題となった場合、当業者の技術常識を説明し、先の出願には、(明示的な記載が無くても)当業者が実施できる程度に本願発明の開示がある旨の反論は有効だと考えられます。

2. 単一性欠如の取り扱い
従来、IPOSの運用上、一の出願に複数の発明が包含されており、その複数の発明が単一性の要件を満たさない場合、「最初の発明」に関する発明のみが調査対象とされることがありました。
今般、IPOSは「最初の発明」とは、「特許請求の範囲」に一番目に記載された発明を意味することを明らかにしました。そして、単一性欠如の拒絶理由が生じた場合、通常、「特許請求の範囲」に一番目に記載された発明、即ち「最初の発明」に対してのみ審査がなされます。
また、単一性欠如の拒絶理由を解消するためには、特許請求の範囲を「最初の発明」に限定する補正が必要となります。単一性が認められなかった他の請求項が、調査報告書に言及されていたとしても、「最初の発明」以外の発明に補正することは認められません。従いまして、出願人にとって、最も重要な発明を、特許請求の範囲の最初に記載することが肝心となります。

改定後の特許審査ガイドライン全文につきましては以下のURLをご参照ください。
https://www.ipos.gov.sg/docs/default-source/resources-library/patents/guidelines-and-useful-information/examination-guidelines-for-patent-applications.pdf