【米国】USPTO、自明性判断のためのガイドラインを更新

2024年04月

米国特許商標庁(USPTO)は、2024年2月27日、U.S.C. §103に基づく自明性の判断のための審査ガイドラインを更新しました。今回公表された更新ガイダンスは、自明性判断について新しい基準を示すものではなく、KSR判決とその後の連邦巡回裁判所(CAFC)判決を踏まえ、既存の自明性の判断手法を再確認するものです。

1. 背景
KSR International Co. v. Teleflex Inc.事件最高裁判決(KSR判決:2007年)から約17年が経過しました。KSR判決は、先発明主義時代の判決であり、その後、米国特許法改正(AIA:2013年施行)によって、自明性判断の時間的焦点が「クレームされた発明の有効出願日以前」に移りました。KSR判決では、Graham v. John Deere Co.事件最高裁判決(Graham判決:1996年)の自明性判断のアプローチ(Grahamテスト*)が明確に再確認されました。

*Grahamテストによる自明性の判断基準は、次の4つの要素からなります。
①先行技術の範囲及び内容の確認、②先行技術とクレームに係る発明の差異の確認、③当業者のレベルの理解、④客観的証拠(市場での成功、長年望まれた必要性等)の考慮。

2. 柔軟なアプローチの強調
更新ガイドラインでは、自明性の判断手法として、今後もGrahamテストが用いられるとしたうえで、KSR判決の特徴である柔軟なアプローチに重点がおかれています。
審査官は、先行技術の範囲を理解する上で柔軟性が求められ、当業者の常識と創造性(当業者はロボットではない)を考慮する必要があるとされています。つまり、当業者は、先行技術の開示を超えて、一般常識等に基づいた合理的な創造を行う可能性があることを考慮に入れる必要があります。
また、先行文献に変更を加える際に必要な動機付けについても、柔軟なアプローチが求められています。先行文献に明示的に記載されている事項だけでなく、市場のニーズ、設計上のインセンティブ、複数の特許の相互に関連する教示、業界における必要性や課題、背景技術、当業者の創造性、常識なども先行文献を組み合わせる動機付けとなり得ることが明示されました。

3. 証拠の裏付けに基づく適切な分析
更新ガイドラインでは、自明性の判断に対する柔軟なアプローチを強調する一方で、自明性の判断には、証拠の裏付けに基づく適切な分析が必要であることを再確認しています。審査官等は、先行文献を組み合わせること及び/又は変更することが当業者にとって合理的であった理由を含め、自明であるとの結論に至った理由を、関連する事実に基づき明確に示さなければなりません。
また、審査官等は、自明性の判断に際し、関連する全ての証拠を考慮しなければならず、宣誓書の形で提出された客観的証拠(Grahamテストの④:市場での成功等)も考慮しなければならないことが明示されました。

更新ガイドラインの詳細につきましては、USPTOの以下URLをご参照ください。
https://www.federalregister.gov/documents/2024/02/27/2024-03967/updated-guidance-for-making-a-proper-determination-of-obviousness