【欧州】英国、「単一特許・統一特許裁判所」制度に不参加を表明、ドイツでは、協定の批准の法案が無効に
2020年05月
英国
2020年2月27日、英国政府は、欧州単一効特許(通称:Unitary Patent「単一特許」)と統一特許裁判所(Unified Patent Court: UPC)からなる、欧州統一特許制度(UPC制度)に参加する予定はないと公表しました。
英国は、UPC制度に参加すべく、2018年4月26日に、統一特許裁判所協定(Unified Patent Court Agreement: UPC協定)を批准していました。
ただし、今回の公表は最終決定ではないとされており、また交渉戦術の一環との観測も一部にあることから、依然として予断を許さない状況です。
不参加の理由
英国政府によりますと、UPC制度の下では、欧州連合(EU)の法律が適用され、欧州司法裁判所の決定に拘束されるため、自立した国家を目指す英国の方向性と相容れないとしています。
ドイツ
UPC協定の批准に関してドイツ連邦憲法裁判所に対して提起されていた違憲訴訟について、3月20日、UPC協定を承認するための国内法案承認の手続は無効なものであったとの判断がなされました。
その理由は、UPC協定を承認するということは主権を欧州連合(EU)の機関であるUPCに移譲することであり、そのような重要な法案であるにもかかわらず、連邦議会議席における2/3以上の賛成を得ていなかったというものであり、UPC協定自体が違憲と判断されたわけではありません。
UPC制度発効の見通し
UPC制度の発効には、ドイツ、フランス、英国を含む13ヶ国の批准が必要とされ、フランス、英国を含む16ヶ国が既に批准をしていたことから、後はドイツの批准を待つのみとの期待も若干ありましたが、今般の英国の公表およびドイツでの裁判結果により今後の見通しがつかない状況となりました。
今後、仮に英国抜きでUPC制度が発効したとしても下記の問題があることが指摘されています。
・ロンドンに設置予定であった、UPCの中央部(化学・生命科学分野)の移設が必要となる(現在、イタリアのミラノが有力な候補地とされている)。
・英国の弁護士・弁理士が、UPCでの代理権を有さないこととなる。
・単一特許の効力が英国に及ばないため制度として魅力に欠ける。