【中国】中国国家知識産権局第343号公告による専利審査指南の改訂について

2021年04月

 2019年12月31日付けで公布された中国国家知識産権局第343号公告によって改訂され
た専利審査指南は2020年2月1日付けで施行された。
 今回の改訂の趣旨は、人工知能等の新業態、新分野関連の特許出願の審査ルールの明確化と
いう創新主体のニーズに応え、関連の特許出願の審査ルールを細分化し、審査実務における難
しい問題を明確化し、特許審査の品質と効率の向上を図り、創新の発展を駆動するとの目標を
支えることである。
 上記第343号公告によって改訂された専利審査指南には、審査指南第二部第九章に第6節
が追加された。
 改訂により新たに追加された審査指南における具体的な内容は、こちら
ご参照ください。
 ここでは、改訂の内容の概要を紹介する。

1. 請求項に係る発明の把握は請求項の全体を考慮する原則(全体考慮原則)の明確化
 人工知能、「インターネット+」、ビッグデータ及びブロックチェーンなど関連の発明専利に
おいて、請求項において往々にしてアルゴリズム又は商業的規則及び方法などの知的活動の規
則及び方法特徴が含まれている。今回の改訂では、審査に当たって「全体考慮原則」を適用す
ることを明確にした。すなわち、技術的特徴とアルゴリズムの特徴又は商業規則及び方法の特
徴などとを簡単に切り離してはならず、請求項に記載されたすべての内容を一体として把握
し、技術的手段、解決しようとする技術的課題及び奏される技術的効果を分析するようにす
る。
2. 知的活動の規則と方法の属否の判断基準の明確化
 請求項に係る発明が抽象的なアルゴリズム又は純粋の商業的規則、方法に係る場合であっ
て、かついかなる技術的特徴も含まれていない場合は、専利法第二十五条第一項第(二)号に
規定する知的活動の規則と方法に該当し、専利権は付与されない。
 ただし、請求項に係る発明にアルゴリズム又は商業的規則、方法のみならず、技術的特徴も
含まれている場合は、専利法第二十五条第一項第(二)号に該当するとして権利取得の可能性
を排除すべきでない。
3. 請求項が技術方案に該当するか否かの審査基準の明確化
 客体関連の条項の適用に関する審査手順を明確化した。すなわち、まず、専利法第二十五条
第一項第(二)号に規定する知的活動の規則と方法の属否の審査を行い、それから専利法第二
条第二項に規定する技術方案の該否の審査を行う。前記技術方案の該否の判断にあたって、請
求項における技術的手段、解決しようとする技術的課題及び奏される技術的効果を分析しなけ
ればならない。
4. 進歩性の判断における関連考慮原則の明確化
 審査にあたって、上述の「全体考慮原則」が新規性、進歩性の判断にも同様に適用されるこ
とに加え、審査指南では、進歩性の判断にはさらに「関連考慮原則」が適用されることを明確
化した。すなわち、技術的特徴と機能的に相互的に支持しあい、相互に作用する関係のあるア
ルゴリズムの特徴又は商業的規則及び方法の特徴を、前記技術的特徴とともに一体として考慮
しなければならず、アルゴリズムの特徴又は商業的規則及び方法の特徴が技術方案に対する貢
献を考慮しなければならない。
5. 審査の事例
 今回の審査指南の改訂では、第6.2節に具体的な審査の事例が10個ほど示され、上記の審査
原則、審査基準を具体的な事例により示されている。
6. 明細書及び請求の範囲の記載に対する基本的要求の明確化
(1)明細書における記載
 ①アルゴリズムの特徴又は商業的規則及び方法の特徴が含まれていることが特徴となるもの
であるため、これらの特徴を明細書において明確に記載する必要がある。
 ②技術的特徴が、如何にしてこれらの特徴と機能的に相互的に支持しあい、相互に作用する
関係を有し、共同して技術的課題を解決したのかを明確に記載する必要がある。
 ③明細書には、品質、精度又は効率の向上、システム内部性能の改善等のような発明の従来
技術に対する有利な効果を明確かつ客観的に記載されていなければならない。
 ④ユーザ側の視点から客観的にユーザ体験が向上したことも、明細書において説明すること
ができる。
(2)請求項における記載
 アルゴリズムの特徴又は商業的規則及び方法の特徴を含む発明専利出願の請求項は、明細書
に基づいて、専利保護の求める範囲を明確かつ簡潔に特定しなければならない。請求項には、
技術的特徴と機能的に相互に支持し合い、相互に作用する関係にあるアルゴリズムの特徴又は
商業的規則及び方法の特徴を記載しなければならない。

参考資料:
http://ip.people.com.cn/n1/2020/0210/c179663-31579809.html
訪問年月日:2021年3月31日